兵庫県加西市 FRP浴槽再生塗装
2015年5月23日投稿
先週の(株)サンゲツ東京支社 上級技術研修の余韻さめやらぬ中、わが社から100km程の兵庫県加西市でFRP浴槽再生塗装を行いました。
わが社に限りませんが、年々ネット経由での受注が増えています。
そして相変わらず遠隔地からの問い合わせも多いです。
高速道路を使えるとはいえ100kmは、高速代、燃料費等を考えると浴槽1基の施工でお伺い出来るかどうか微妙な距離です。
施主様から電話でバスタブの状況をお聞きし、受注させていただくことを決めました。
かなり特殊なケースです。
築後8年。
使用開始から4~5年で浴槽表面に異常発生。
お客さま曰く「今はFRP浴槽がはげしく色あせし、ゲルコート(メーカーが工場で施すポリエステル樹脂仕上げ塗装)が無くなって、表面にガラス繊維が露出している。」
築後20~25年ならまだしも4~5年は異例の早さです。
Why?
How?
と知りたくなるのは、この仕事をやる人間にとって自然な反応です。
(施工前 NO.1)
喫水線(これは正しくは船舶用語です。ここではバスタブ水面ぎわの線と解釈ください。)から下が褪色および艶引けしています。
肉眼で見ると褪色部に微細なガラス繊維が大量に露出しています。
お客さまが入浴に不安を感じるのは当然です。
(施工後 NO.1)
現場調査の結果、「FRP全面ライニングは必要としない。ただしベースコートを倍量塗布することで、ゲルコート下のガラス繊維露出を防止する必要あり。」と判断しました。
- 入念な下地調整(サンディング)
- 2液反応硬化型エポキシ樹脂製ベースコート(ホーク社製ウルトラグリップ4000)を通常の倍量スプレー。
- 2液反応硬化型アクリル・ウレタン樹脂製トップコート(ホーク社製グラステック9200)通常量スプレー
基本工程は上記となりました。
同じバスタブをアングルを少し変えて撮影しました。
(施工前 NO.2)
(施工後 NO.2)
Why?
How?
なぜこんなに早くバスタブが劣化したのか?
やはり直接実物に当たるのが一番です。
お客さまは、水道代、ガス代の節約のため1週間お湯を張り放しにされていました。
そのうえ雑菌等の繁殖を防ぐため、毎日塩素(次亜塩素酸ナトリウム)を少量投入されていたのです。
長時間の溜め湯と塩素の投入。
この二つが早期劣化の原因でした。
一般的に合成樹脂は、長時間液体と接触する環境を苦手とします。
そのような環境下では加水分解やオズモシス(osmosis=浸透作用)が起こりやすくなります。
FRP製浴槽はポリエステル樹脂を主成分としています。
ポリエステル樹脂は、石油を原料として作られる合成樹脂です。
故にFRP製浴槽は、長時間の溜め湯により劣化が進みます。
もう一点、一般的に合成樹脂はアルカリ水溶液に接触すると加水分解を起こしやすくなります。
(逆に酸性水溶液では加水分解が起こりにくい。)
塩素を投入すると浴槽内のお湯はアルカリ性となります。
故にFRP製浴槽は、塩素の投入により劣化(加水分解)が進みます。
なお今回のケースでは長時間の溜め湯によって起こるオズモシス現象(膨れ)は見られませんでした。
お客さまには早期劣化の原因をご説明し、塗装を長持ちさせるための具体的使い方を列挙したペーパー「使用上のお願い」をお渡しして現場を後にしました。
施工も無事完了し、 Why? How? への答えも出たのでとても爽やかな気持ちの帰路でした。